
ダイエットの相談でよく聞かれるのが、
「朝食は食べた方がいいですか?」
「夜遅い夕食はやっぱり太りますか?」
「1日3食が正解ですか?」
という質問です。
近年は「時間栄養学」と呼ばれる分野が注目され、何を食べるかだけでなく、いつ食べるかも健康に影響すると考えられています。
そんな中、日本人1,000人以上を対象とした興味深い研究が発表されました。今回は最新の研究結果をもとに、食事時間とダイエットの関係について分かりやすく解説します。
ダイエットは「何を食べるか」だけではありません
これまでのダイエット研究では、
・摂取カロリー
・糖質や脂質の量
・たんぱく質摂取量
などが中心に研究されてきました。
一方で近年注目されているのが「時間栄養学」です。
時間栄養学では、
・朝食を食べる時間
・夕食を食べる時間
・食事回数
・間食のタイミング
などが体内時計や代謝に影響すると考えられています。
実際に海外では、遅い夕食や不規則な食事が肥満や糖代謝異常と関連する可能性を示した研究も報告されています。
そのため、
「朝食は必ず食べるべき」
「夜遅い食事は太る」
といった話題が注目されるようになりました。
日本人1,000人超の食事記録から4つの食事リズムが見えてきました
今回の研究では、20〜69歳の日本人1,047人を対象に11日間の食事記録を解析しました。
食事時間や間食回数、起床・就寝時間など19項目を分析した結果、主に4つの食事パターンに分類できることが分かりました。
① 朝食しっかり・規則正しい型
勤務日は早起き
朝食を早い時間にしっかり食べる
比較的規則正しい生活
いわゆる「理想的」とされやすいパターンです。
② 休日朝食抜き型
平日と休日で生活リズムが大きく異なる
休日は朝食を抜きやすい
若年層や男性に多い
いわゆる「週末の寝だめ型」に近いパターンです。
③ 間食多め・夕食少なめ型
間食回数が多い
夕食は比較的軽め
女性に多い傾向
食事というより、小分けに食べるスタイルともいえます。
④ 昼食しっかり・夕食早め型
昼食がメイン
夕食終了時刻が早い
夜の食事量が少ない
時間栄養学で理想とされる考え方に近いパターンです。
意外だったのは「どのパターンも肥満と強く結びつかなかった」ことです
今回の研究で最も興味深かった点はここです。
研究チームは、
BMI
腹囲
食事の質
との関連を調べました。
その結果、
どの食事リズムも肥満との有意な関連は認められませんでした。
つまり、
朝食しっかり型
休日朝食抜き型
間食多め型
昼食しっかり型
の間で、肥満に大きな差は確認されなかったのです。
「朝食を抜いても太らない」という意味ではありません
ここは誤解しやすいポイントです。
今回の研究結果は、
「朝食を抜くことを推奨する」
という意味ではありません。
研究が示したのは、
食事時間だけで体重は決まらない
ということです。
体重には、
総摂取カロリー
食事内容
運動量
睡眠
ストレス
年齢
ホルモンバランス
など多くの要素が関わっています。
食事時間だけを変えれば痩せる、という単純な話ではないことが改めて示されたといえます。
最近話題の16時間断食はどう考えればよいのでしょうか
SNSや動画サイトでは、
16時間断食
オートファジーダイエット
Time Restricted Eating(時間制限食)
などが注目されています。
16時間断食が注目されている理由は、単なる「食べる時間を短くするダイエット法」だからではありません。近年の時間栄養学や抗加齢医学では、体内時計、インスリン分泌、血糖変動、慢性炎症、ミトコンドリア機能、そしてオートファジーとの関連が研究されています。
オートファジーとは、細胞の中で不要になったタンパク質や細胞小器官を分解し、再利用する仕組みです。2016年にはオートファジー研究に対してノーベル生理学・医学賞が授与され、老化研究でも重要なテーマの一つになっています。
16時間断食で体重が減る背景には、結果的に総摂取カロリーが減ることも関係します。一方で、それだけではなく、食事をしない時間を確保することで、インスリン分泌の休息、血糖変動の安定、サーカディアンリズムの調整など、代謝面でのメリットも期待されています。
つまり16時間断食は、単なる減量法ではなく、健康寿命や加齢対策の観点からも注目されている食事戦略の一つです。
ただし、ここは慎重に考える必要があります。「16時間断食をすれば若返る」「誰でも健康寿命が延びる」と証明されているわけではありません。ヒトでの長期的な抗加齢効果については、まだ研究が進められている段階です。
また、すべての方に向く方法ではありません。
以下のような方は慎重な判断が必要です。
糖尿病治療中の方
妊娠中・授乳中の方
成長期のお子さん
低体重の方
フレイル傾向のある高齢者
摂食障害の既往がある方
16時間断食が合う方もいれば、3食を規則正しく食べた方が体調が安定する方もいます。大切なのは、流行に合わせることではなく、自分の体質、生活リズム、持病、服薬状況に合っているかを見極めることです。
当院では、痩せるためだけでなく、将来の健康や加齢との向き合い方も含めて、無理なく続けられる食事リズムを一緒に考えていきます。
ダイエットで本当に大切なのは「続けられる食事リズム」です
今回の研究では、
研究者自身も
「画一的な理想の食事リズムを押し付けるべきではない」
と述べています。
たとえば、
子育て中の方
夜勤がある方
シフト勤務の方
早朝出勤の方
では生活環境が異なります。
朝5時に起きる人と、深夜まで働く人に同じ食事時間を求めても現実的ではありません。
重要なのは、
その人の生活に合わせて無理なく続けられることです。
当院では「食べる時間」だけでなく生活全体を見ています
ダイエット外来では、
「夜は何時までに食べればいいですか?」
という質問をいただくことがあります。
もちろん食事時間も大切ですが、
実際には
睡眠不足
たんぱく質不足
間食の内容
運動不足
ストレス
などが影響していることも少なくありません。
当院では食事時間だけに注目するのではなく、生活習慣全体を確認しながら、一人ひとりに合った方法を一緒に考えています。
ダイエットでよくある考え方を整理すると

Q&A
Q. 朝食は食べた方が良いのでしょうか?
多くの方にとって朝食は栄養補給や生活リズムを整える助けになります。ただし、全員が同じ食べ方をする必要があるわけではありません。仕事や生活習慣、空腹感の有無なども考慮して決めることが大切です。
Q. 16時間断食はおすすめですか?
16時間断食(時間制限食)は、近年の時間栄養学や抗加齢医学の分野で注目されている方法の一つです。体重管理だけでなく、血糖コントロールや代謝改善、さらにはオートファジーとの関連についても研究が進められています。
実際に「朝食を抜くだけの流行ダイエット」とは少し異なり、一定時間しっかり消化器を休ませることを目的とした食事法です。体重減少については総摂取カロリーの減少も関与すると考えられていますが、それだけでは説明できない代謝上のメリットが示唆されています。
一方で、糖尿病治療中の方、妊娠中・授乳中の方、成長期のお子さん、高齢で低栄養リスクのある方には向かない場合があります。
当院では、「全員に16時間断食を勧める」という考え方ではなく、生活スタイルや健康状態に合わせて取り入れられるかを判断しています。
Q. 間食はやめた方が良いですか?
間食そのものが悪いわけではありません。菓子パンや甘い飲料と、ナッツやヨーグルトでは意味が異なります。量や内容を見直すことが大切です。
Q. 結局、ダイエットで一番大事なことは何ですか?
多くの研究を総合すると、無理なく続けられる生活習慣です。短期間の極端な方法よりも、食事・睡眠・運動を含めた長期的な管理が成功につながりやすいと考えられています。
まとめ

「朝食を抜くと太る」「夜8時以降は絶対に食べてはいけない」――ダイエットにはさまざまな情報があります。
今回の日本人1,000人超を対象とした研究では、食事リズムの違いだけでは肥満との明確な関連は認められませんでした。
もちろん、食べる時間がまったく関係ないという意味ではありません。しかし、体重管理は食事時間だけで決まるほど単純ではないことも分かります。
大切なのは、自分の生活スタイルに合った方法を無理なく続けることです。
流行のダイエット法に振り回されるのではなく、「何を食べるか」「どれくらい食べるか」「どう続けるか」を含めて考えることが、結果的には近道かもしれません。
参考文献
・Murakami K, Shinozaki N, Sasaki S, et al. Dietary timing patterns among Japanese adults and their associations with diet quality and adiposity. British Journal of Nutrition. 2025.
・厚生労働省. 日本人の食事摂取基準(2025年版)
・日本肥満学会. 肥満症診療ガイドライン2022
・日本時間栄養学会. 時間栄養学ハンドブック
・Sato-Mito N, et al. Chrononutrition and metabolic health. Nutrients.
ちぐさ内科クリニック覚王山
内科/美容内科/美容皮膚科
内科医 美容皮膚科医 近藤千種

近藤院長の経歴はこちら
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