24週間で約20%、68週間で約29%減量――次世代肥満治療薬はどこまで進化するのか【2026年最新版】

「肥満治療薬で、どこまで体重は変わるのか」。
2026年現在、この問いへの答えは数年前とは大きく変わりつつあります。GLP-1からGIP、さらにグルカゴン受容体へ。後編では、最新の臨床試験を読み解きながら、期待だけでなく限界や注意点も含めて見ていきます。
24週間で約20%という数字が示した、UBT251のインパクト
次世代薬として注目されている一つが、UBT251です。
UBT251は、GLP-1、GIP、グルカゴンという3つの受容体に働く「トリプルGアゴニスト」と呼ばれる薬剤です。
2026年に報告された中国での第2相試験では、過体重または肥満の方を対象に、週1回投与で24週間の評価が行われました。最高用量群では平均19.7%の体重減少が報告され、プラセボ群の約2.0%と比べて大きな差が示されています。対象者の平均体重は約92.2kgで、最高用量群では平均17.5kgの減量に相当すると報告されています。
この数字が注目される理由は、期間の短さです。24週間、つまり約半年で20%近い体重減少が示されたことは、従来の肥満治療薬と比べても非常に強い印象を与えます。
ただし、ここで大切なのは「第2相試験」という段階です。第2相試験は、有効性や用量、安全性の見通しを確認する重要な段階ですが、より多くの患者さんで長期的に確認する第3相試験とは意味が異なります。現時点では、期待できる薬剤である一方、長期使用時の安全性、減量後の維持、筋肉量への影響、実臨床での使いやすさなどは、今後さらに検証が必要です。

レタトルチドは、第3相試験で“手術に近い減量幅”を示し始めています
もう一つ大きな話題となっているのが、レタトルチドです。こちらもGLP-1、GIP、グルカゴンの3つに作用するトリプルアゴニストです。
2025年末に発表されたTRIUMPH-4試験では、肥満または過体重で膝関節症を伴う成人を対象に、68週間の第3相試験が行われました。12mg群では平均28.7%の体重減少が報告され、同時に膝の痛みや身体機能にも改善がみられたとされています。
さらに2026年には、TRIUMPH-1試験で12mg群が80週間で平均28.3%の体重減少を示し、45.3%の参加者が30%以上の減量を達成したと発表されています。これは、薬物療法としてはかなり大きな減量幅であり、肥満外科手術に近い領域として議論される理由にもなっています。
しかし、数字が大きいほど慎重に見る必要があります。強い減量効果は、吐き気、下痢、便秘、嘔吐などの消化器症状、栄養不足、筋肉量低下、過度な体重減少への配慮をより重要にします。減量率だけを見て「強い薬ほど良い」と考えるのではなく、患者さんの年齢、筋肉量、併存疾患、生活背景に合わせて、どこまで減らすことが健康上の利益につながるのかを見極める必要があります。
経口薬オルフォルグリプロンは、注射薬中心だった流れを変えるかもしれません
これまでGLP-1関連薬は、注射薬が中心でした。そこに新しい選択肢として登場しているのが、オルフォルグリプロンです。
オルフォルグリプロンは、1日1回内服する非ペプチド型の経口GLP-1受容体作動薬です。従来の経口セマグルチドは服用方法に注意が必要でしたが、オルフォルグリプロンは小分子薬であり、経口薬としての利便性が期待されています。
2026年には米国FDAが、成人の肥満または体重関連合併症を伴う過体重に対して、オルフォルグリプロンを承認したと発表されています。 また、2型糖尿病を伴う方を対象としたATTAIN-2試験では、72週間で体重減少、血糖、心血管代謝リスク因子の改善が報告されています。
内服薬の利点は、注射への抵抗感がある方にとって治療の入り口が広がることです。一方で、毎日服用する必要があるため、飲み忘れや継続性の問題があります。また、注射薬と同様に消化器症状は起こり得ます。経口薬だから安全、注射薬だから強すぎる、という単純な分け方はできません。
WegovyのMASH適応は、肥満治療が“体重だけ”ではないことを示しています
肥満治療薬の進化は、体重を減らすことだけにとどまりません。特に注目されるのが、MASH、つまり代謝機能障害関連脂肪肝炎への広がりです。
MASHは、脂肪肝の中でも肝臓に炎症や線維化が進む病態で、進行すると肝硬変や肝がんのリスクにも関わります。肥満、2型糖尿病、脂質異常症などと深く関連するため、体重管理だけでなく、肝臓を含めた代謝全体の改善が重要になります。
米国FDAは2025年、セマグルチド2.4mg製剤であるWegovyを、中等度から進行した線維化を伴う成人MASHに対して承認したと発表しています。これはMASH改善と肝線維化改善を根拠とした承認であり、臨床的利益を確認する試験は継続されています。
日本でもPMDAの医療用医薬品情報では、ウゴービについて肥満症に加え、2026年6月時点でMASHに関する最適使用推進ガイドラインが掲載されています。 つまり、肥満治療薬は「体重を減らす薬」から、「肥満に関連する臓器障害をどう改善するか」という段階へ進みつつあります。

期待が大きい薬ほど、副作用と“減りすぎ”にも注意が必要です
GLP-1関連薬、デュアルアゴニスト、トリプルアゴニストに共通して多いのは、消化器症状です。吐き気、下痢、便秘、腹部不快感、嘔吐などが代表的です。多くは増量時に出やすく、時間とともに落ち着くこともありますが、生活に支障が出る場合や脱水を伴う場合には調整が必要です。
また、急速な体重減少では胆石、胆のう炎、栄養不足、筋肉量低下にも注意します。食事量が自然に減ることは治療上の利点ですが、たんぱく質やビタミン、ミネラルまで不足すると、疲れやすさ、脱毛、筋力低下につながることがあります。
セマグルチド製剤の米国添付文書では、甲状腺C細胞腫瘍に関する警告があり、甲状腺髄様がんの本人または家族歴、多発性内分泌腫瘍症2型では禁忌とされています。 薬剤ごとに禁忌や注意点は異なるため、自己判断で使用することは避けるべきです。
“誰でも使える薬”ではない理由があります
肥満治療薬は、体重を落としたいすべての人のための薬ではありません。医学的には、肥満そのものではなく、肥満に関連する健康障害を予防・改善する目的で使うかどうかを判断します。
日本では、肥満はBMI25以上、肥満症はBMI25以上に加えて健康障害を伴う、または内臓脂肪蓄積が確認される状態として整理されています。薬物療法は、食事療法、運動療法、行動療法を行っても十分な効果が得られない場合に検討されます。
たとえば日本で承認されているゼップバウンド、一般名チルゼパチドの最適使用推進ガイドラインでは、対象は高血圧、脂質異常症、2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法で十分な効果が得られず、BMI27以上で肥満関連健康障害を2つ以上有する場合、またはBMI35以上の場合などに限られています。
妊娠中、授乳中、未成年、摂食障害が疑われる方、重い消化器疾患がある方、膵炎や胆のう疾患の既往がある方、高齢で筋肉量が少ない方では、特に慎重な判断が必要です。
当院では、体重だけでなく“代謝と続けやすさ”を見ながら考えます
当院で肥満治療をご相談いただく場合、まず確認したいのは「何kg減らすか」だけではありません。体重が増えた背景、食事リズム、睡眠、ストレス、月経や更年期、内服薬、血糖や脂質、肝機能、筋肉量などを総合的に見ていきます。
薬物療法が向いている方もいれば、まず生活習慣、栄養、睡眠、内科的な検査を整えることが優先になる方もいます。特に急激な減量では、筋肉を落とさない工夫が大切です。たんぱく質の摂取、無理のない運動、定期的な採血、体調変化の確認を組み合わせながら、長く続けられる治療を考えます。
肥満治療の目的は、数字を小さくすることだけではありません。糖尿病、高血圧、脂質異常症、脂肪肝、睡眠時無呼吸、関節への負担など、将来の健康リスクを減らすことが本来の目的です。気になる方は、まず現在の体の状態を確認するところから始めてみてください。
日本では、承認薬・未承認薬・自由診療を分けて考える必要があります
2026年時点で、日本でも肥満症治療薬の選択肢は増えています。ウゴービ、ゼップバウンドなどは、一定の条件を満たす肥満症に対して使用される薬剤として位置づけられています。
一方で、UBT251やレタトルチドなどの次世代トリプルアゴニストは、現時点では研究段階または海外での開発段階にある薬剤です。SNSや個人輸入、未承認薬をうたう広告で目にすることがあっても、安全性、有効性、品質管理、救済制度の面で大きな注意が必要です。
肥満治療薬は、単に薬を処方すればよいというものではありません。血液検査、体重・腹囲、血圧、血糖、脂質、肝機能、腎機能、栄養状態を見ながら、必要に応じて薬の継続、減量、中止を考えます。美容目的だけで安易に使う薬ではなく、医学的に利益がリスクを上回るかを確認しながら進める治療です。

Q&A
Q. 新しい薬ほど、よく効くのでしょうか?
新しい薬ほど作用点が増え、体重減少効果が大きくなる可能性はあります。ただし、それは「誰にとっても最良」という意味ではありません。作用が強いほど、吐き気や下痢、便秘、栄養不足、筋肉量低下などへの配慮も重要になります。体重をどこまで減らすべきかは、年齢、合併症、筋肉量、生活背景によって異なります。
Q. 24週間で約20%、68週間で約29%という結果は、自分にも期待できますか?
臨床試験の結果は、一定の条件を満たした参加者を対象に、食事や運動の指導を組み合わせて得られた平均値です。そのため、同じ薬を使えば全員が同じように減るという意味ではありません。体重、血糖、食習慣、薬の忍容性、継続期間によって結果は変わります。数字だけで判断せず、自分にとって安全で意味のある減量目標を医師と相談することが大切です。
Q. 経口薬なら、注射薬より気軽に使えますか?
内服薬は注射への抵抗がある方にとって大きな利点があります。ただし、医療用医薬品であることは変わらず、消化器症状や禁忌、併用薬の確認は必要です。毎日飲む薬では、飲み忘れや生活リズムとの相性も重要になります。気軽さだけで選ぶのではなく、継続しやすさと安全性を一緒に考える必要があります。
Q. MASHにも効くということは、脂肪肝があれば使った方がよいのでしょうか?
脂肪肝があるからすぐ薬、というわけではありません。MASHは脂肪肝の中でも炎症や線維化が問題になる病態で、血液検査、画像検査、線維化評価などを踏まえて判断します。体重管理、血糖、脂質、飲酒、運動、睡眠などの見直しも重要です。肝機能異常や脂肪肝を指摘された方は、まず現在の肝臓の状態を評価することが大切です。
Q. 自費でGLP-1を使う場合、何に注意すればよいですか?
同じではありません。夏バテは慢性的な疲労や食欲低下などを指すことが多い一方、熱中症は体温調節機能が破綻する急性の病態です。意識がもうろうとする、高体温、けいれん、反応が鈍いなどの症状がある場合は、漢方薬ではなく速やかな救急対応が必要です。
まとめ
2026年現在、肥満治療薬は大きな転換期にあります。GLP-1からGIP、さらにグルカゴンへと作用点が広がり、UBT251やレタトルチドでは、これまでの薬物療法を超えるような体重減少が報告され始めています。
一方で、効果が大きい薬ほど、誰に、いつ、どのように使うかが重要になります。減量率だけを追うのではなく、血糖、血圧、脂質、肝臓、筋肉量、生活の質を含めて考えることが、これからの肥満治療には欠かせません。
肥満症は「意志の弱さ」ではなく、ホルモンや代謝、環境が関わる慢性疾患です。治療の選択肢が増えた今だからこそ、正しい情報と継続的なサポートのもとで、自分に合った方法を選ぶことが大切です。気になる方は、一度ご相談ください。
参考文献
・日本肥満学会, 2022, 肥満症診療ガイドライン2022, ライフサイエンス出版.
・PMDA, 2026, ウゴービ皮下注 医療用医薬品情報・最適使用推進ガイドライン, https://www.pmda.go.jp/
・PMDA, 2026, ゼップバウンド皮下注 最適使用推進ガイドライン チルゼパチド, https://www.pmda.go.jp/
・Novo Nordisk / United Laboratories, 2026, UBT251 Phase 2 trial in China: up to 19.7% weight loss after 24 weeks.
・Eli Lilly and Company, 2025, Retatrutide TRIUMPH-4 Phase 3 topline results.
・Eli Lilly and Company, 2026, Retatrutide TRIUMPH-1 Phase 3 topline results.
・FDA, 2025, FDA Approves Treatment for Serious Liver Disease Known as MASH.
・Lancet / ATTAIN-2 investigators, 2025, Orforglipron, an oral small-molecule GLP-1 receptor agonist, for obesity treatment in adults with type 2 diabetes.
ちぐさ内科クリニック覚王山
内科/美容内科/美容皮膚科
内科医 美容皮膚科医 近藤千種

近藤院長の経歴はこちら
_________________________________________
千種区の発熱外来なら【ちぐさ内科クリニック覚王山】
CHIGUSA CLINIC KAKUOZAN
覚王山駅2番出口すぐ
院長 近藤千種 @chigusakondo_mrsjapan
火〜金曜:9時30分〜12時30分 14時30分〜19時00分(最終受付18時)
日曜 :9時30分〜17時(最終受付16時半)