
梅雨に入ると、「朝から体が重い」「むくみやすい」「頭がすっきりしない」と感じる方が増えてきます。
検査では大きな異常が見つからないのに、なぜか調子が悪い。そんな梅雨時期の不調を、漢方では「水滞(すいたい)」という考え方で捉えることがあります。今回は、湿気の多い季節に起こりやすい体調不良の理由と、日常生活や漢方治療でできる対策をご紹介します。
梅雨になると体が重く感じるのには理由があります
梅雨は気温だけでなく湿度も高くなります。
私たちの体は汗や尿によって余分な水分を調節していますが、湿度が高くなると汗が蒸発しにくくなり、水分代謝のバランスが崩れやすくなります。
漢方では、このような状態を「湿(しつ)」や「水滞(すいたい)」として捉えます。
水滞とは、体の中の水分がうまく巡らず停滞した状態を指します。
水たまりができると空気の流れが悪くなるように、体の中でも余分な水分がたまることでさまざまな不調が現れると考えられています。
むくみだけではありません。水滞で起こりやすい症状とは
「水分がたまる」と聞くと足のむくみをイメージするかもしれません。
しかし実際には、それ以外にもさまざまな症状につながることがあります。
こんな症状はありませんか?
・朝から体が重い
・頭がぼんやりする
・頭痛の回数が増える
・めまいやふらつきがある
・顔や足がむくむ
・胃がもたれる
・雨の日に体調が悪くなる
乗り物酔いしやすい
耳鳴りを感じる
これらすべてが水滞とは限りませんが、梅雨時期に症状が悪化する場合には一つのヒントになることがあります。
「年齢のせいかな」と思っていた不調が湿気と関係していることもあります
40代以降になると、
・疲れやすくなった
・朝の回復が遅い
・むくみが取れにくい
と感じる方が増えてきます。
もちろん加齢による変化もありますが、実際には季節や生活習慣が影響していることも少なくありません。
特に梅雨時期は、
・運動量の低下
・冷たい飲み物の増加
・エアコンによる冷え
などが重なり、水分代謝がさらに乱れやすくなります。
「年齢だから仕方ない」と決めつける前に、生活環境にも目を向けてみる価値があります。
実は毎日の習慣が水滞を悪化させていることがあります
梅雨の不調対策は、まず生活習慣の見直しから始まります。
冷たい飲み物を飲み過ぎていませんか
暑くなると冷たい飲み物が増えます。
しかし胃腸は水分代謝の中心的な役割を担うため、過度な冷飲は働きを弱めることがあります。
運動不足になっていませんか
雨の日はどうしても活動量が減ります。
軽い散歩やストレッチでも血流や水分循環の改善に役立つことがあります。
塩分の多い食事が続いていませんか
塩分過多はむくみの原因になります。
外食や加工食品が続く時期は注意が必要です。
漢方では体質に合わせて水分バランスを整えていきます
漢方治療の特徴は、「むくみ」という症状だけを見るのではなく、その背景にある体質も含めて考える点です。
五苓散(ごれいさん)
比較的よく用いられる漢方薬です。
体内の水分バランスを調整する作用が期待され、むくみ、頭痛、めまい、気象病などに使用されることがあります。
一般名:五苓散エキス
根拠レベル:中(国内外の臨床研究・実臨床経験の蓄積)
主な副作用:発疹、胃部不快感など
注意点:脱水状態では適さない場合があります
苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)
立ちくらみやめまい、動悸を伴う方に使用されることがあります。
「ふわふわする」「頭が揺れる感じがする」という方に処方されることもあります。
一般名:苓桂朮甘湯エキス
推奨度の目安:中
根拠レベル:低〜中
(めまい、起立性調節障害、自律神経症状に関する報告や実臨床経験が中心)
服用の目安:通常は医師の指示に従い1日2〜3回
主な副作用:発疹、胃部不快感など
注意点:甘草を含むため、長期使用では偽アルドステロン症に注意が必要です
半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)
胃腸が弱く、めまいや頭重感を繰り返す方に用いられることがあります。
高齢の方のふらつきや慢性的な頭重感で使用されることもあります。
一般名:半夏白朮天麻湯エキス
推奨度の目安:中
根拠レベル:低〜中
(慢性めまい、頭重感、高齢者の平衡障害に関する研究や実臨床経験あり)
服用の目安:通常は医師の指示に従い1日2〜3回
主な副作用:発疹、胃部不快感、食欲不振など
注意点:甘草含有製剤との併用時は低カリウム血症や偽アルドステロン症に注意が必要です
※漢方薬は体質や症状によって選択が異なるため、市販薬での自己判断よりも医師や薬剤師への相談が推奨されます。
「天気が悪いと頭痛がする」は気のせいではないかもしれません
近年は「気象病」という言葉も広く知られるようになりました。
気圧や湿度の変化によって、
頭痛
めまい
倦怠感
関節痛
などが起こることがあります。
西洋医学でも自律神経との関連が指摘されており、漢方では水滞の考え方から治療を検討することがあります。
毎回雨の前に症状が出る場合は、記録をつけてみると傾向が見えてくることがあります。
不調が続く場合は別の病気が隠れていないか確認も大切です
むくみやだるさの原因は水滞だけではありません。
例えば、
心不全
腎疾患
肝疾患
甲状腺疾患
貧血
などでも似た症状が現れます。
特に急激なむくみ、息切れ、強い倦怠感がある場合は、自己判断せず医療機関での評価が必要です。
漢方治療を検討する場合も、まずは重大な病気が隠れていないことを確認することが大切です。
梅雨の不調への向き合い方を整理しました

Q&A
Q. 五苓散を飲めば梅雨の不調は改善しますか?
五苓散が合う方では症状改善が期待できることがあります。
ただし、梅雨の不調にはさまざまな原因があり、すべての方に効果があるわけではありません。
漢方は体質との相性が重要です。
症状が続く場合は自己判断ではなく診察を受けることをおすすめします。
Q. むくみがある人は水を飲まない方が良いのでしょうか?
そのようなことはありません。
むしろ脱水によって体調を崩すことがあります。
大切なのは極端に制限することではなく、適切な水分摂取と塩分管理です。
心臓や腎臓の病気がある方は医師の指示に従ってください。
Q. 気象病と水滞は同じものですか?
同じではありません。
気象病は気圧や天候変化による体調不良を指す一般的な呼び方です。
一方、水滞は漢方医学の概念です。
両者が重なっているケースもありますが、完全に同じ意味ではありません。
Q. 市販の漢方薬でも大丈夫ですか?
軽い症状であれば市販薬が選択肢になることもあります。
ただし、漢方薬は「同じ症状なら同じ薬」という考え方ではありません。
体質や他の症状によって適する処方が変わります。
持病がある方や複数の薬を服用している方は医療機関で相談しましょう。
Q. どのくらいで効果が出ますか?
処方によって異なります。
五苓散のように比較的早く変化を感じる場合もあれば、数週間かけて体調が整っていく場合もあります。
症状の経過や体質をみながら調整していくことが大切です。
焦らず継続的に評価していきましょう。
まとめ

梅雨になると増える「だるい」「むくむ」「頭が重い」といった不調は、単なる気分の問題ではなく、湿度や気圧の変化、水分代謝の乱れが関係している可能性があります。
漢方ではこうした状態を「水滞」と考え、体質や症状に合わせて治療を行います。もちろん、すべてが漢方で説明できるわけではなく、背景に別の病気が隠れている場合もあります。
当院では必要に応じて一般的な内科診療や検査を行いながら、漢方治療の適応も検討しています。
毎年この時期になると同じ不調を繰り返している方は、「季節のせい」と我慢する前に一度ご相談ください。体質や生活習慣を見直すことで、梅雨を少し過ごしやすくできるかもしれません。
参考文献
・日本東洋医学会. 漢方診療ガイドライン 各疾患領域
・日本東洋医学会 EBM委員会. 漢方製剤のエビデンスレポート
・日本内科学会. 内科疾患における漢方治療の考え方
・厚生労働省 eJIM(統合医療情報発信サイト)
・日本頭痛学会. 頭痛の診療ガイドライン 2021
・日本めまい平衡医学会. めまい診療ガイドライン
ちぐさ内科クリニック覚王山
内科/美容内科/美容皮膚科
内科医 美容皮膚科医 近藤千種

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