
妊娠11週・授乳中に発熱したとき、最初に確認したいこと
お子様がインフルエンザと診断された翌朝、自分にも発熱と関節のだるさが出てきた。妊娠初期で授乳も続けていると、薬が胎児やお子様にどう関わるのか、手元の解熱薬を飲んでよいのか、迷うことが重なります。この記事では、抗インフルエンザ薬に期待できる効果と情報の限界、薬の種類ごとの確認点、授乳の続け方、受診を急ぎたい症状を整理しました。迷っている間も、発熱した時刻だけは記録しておきましょう。名古屋市で受診先を探す方に向けて、電話で伝える内容もまとめています。
この記事の要点まとめ
- 妊娠中は重症化しやすいとされ、発熱時刻・症状・家族の感染状況を記録して医療機関へ相談します。
- 薬は妊娠週数や授乳状況などを伝え、医師と使用を検討します。
- 授乳・解熱薬は個別に相談し、手洗いとマスクを。息苦しさや水分が取れない場合は速やかに受診します。
目次
妊娠中にインフルエンザを疑ったら、薬の相談はいつする?

妊娠中は心肺の働きや免疫のバランスが変化するため、インフルエンザが重症化しやすいとされています1。薬を使うかどうか考える前に、まず相談のタイミングを押さえておきましょう。
発熱から48時間以内に相談する意味
抗インフルエンザ薬はウイルスの増殖を抑える薬です。発症から48時間以内に使い始めると、熱が続く期間を短くする効果が期待しやすいと報告されています2。とはいえ、48時間を過ぎたら使えないというわけではありません。妊娠中は重症化しやすい点を踏まえ、時間が経っていても症状に応じて治療を検討する考え方が示されています1。「もう遅いかも」と相談を見送らず、起点となる発熱時刻をメモしておいてください。
検査結果を待つ間も伝えたい、同居のお子様の感染
発症直後は、迅速検査でウイルスが検出されにくいことがあります。同居のお子様がインフルエンザと診断されている事実は、それだけで医師にとって大切な判断材料です。お子様の診断日、ご自身の発熱時刻と体温、関節痛やせきといった症状をまとめて伝えると、検査結果とあわせて治療開始を検討しやすくなります。「陰性だったから様子を見よう」と自己判断せず、家族の状況ごと相談しましょう。
薬への心配と、感染を治療せずに過ごす影響
妊娠11週前後は赤ちゃんの器官が形づくられる時期。薬をできるだけ避けたいと感じるのは自然なことです。一方で、高熱が長引く、水分が取れない、せきで眠れないといった状態も母体に負担をかけます。妊娠中の高熱そのものが、妊娠経過に影響する要因の一つと考えられている点も見逃せません1。薬の影響だけでなく、治療しない場合の体への負担も並べて、医師と一緒に判断していくのが現実的な進め方です。インフルエンザの基本的な知識は、厚生労働省の情報でも確認できます3。
抗インフルエンザ薬は妊娠初期・授乳中にどう選ぶ?

国内で使われる抗インフルエンザ薬は、飲み薬・吸入薬・点滴薬に分かれます。投与方法の違いだけでなく、妊娠中や授乳中の使用経験がどれだけ蓄積されているかも、選ぶときの手がかりになります。
タミフルなどの飲み薬で確認すること
オセルタミビル(商品名:タミフル)は、長年にわたり幅広い年代で使われてきた薬です。妊娠中の使用経験も比較的多く、薬の体内での動きについても研究が積み重ねられています4。海外の文献では、妊娠中の治療薬として優先して検討される薬に位置づけられています12。通常は1日2回、5日間の内服です。母乳へ移る量はごくわずかとする報告がある一方4、授乳中のお子様への影響がないと言い切れる段階ではありません。処方を受ける際は、妊娠週数と授乳の回数、お子様の月齢を伝えてください。家族に処方された残りの薬を飲むことは控えましょう。
吸入薬・点滴薬が検討される場面
ザナミビル(リレンザ)やラニナミビル(イナビル)は吸入薬で、薬が主に気道にとどまります。そのため血液中や母乳へ移る量は少ないと考えられています。ただし、吸入器を使って正しく吸い込めるかどうかが前提です。点滴薬のペラミビル(ラピアクタ)は、吐き気で飲み薬が使いにくいときや、症状が重いときに候補になります。点滴に対応できる診療体制かどうかも判断材料です。いずれの薬も、妊娠中・授乳中のデータ量には差があります。
吸入薬・点滴薬で起こりうる主な副作用
- 吸入薬:せき、のどの刺激感、吐き気、下痢、発疹などが出ることがあります。気管支が狭くなって息苦しくなる(気管支けいれん)ことがあり、ぜんそくなど呼吸器の持病がある方は特に注意が必要です
- 点滴薬:下痢、吐き気、白血球の減少、肝臓の検査値の変化などが出ることがあります
- いずれの薬でも、まれにショックやアナフィラキシー(急なじんましん・息苦しさ・血圧低下など)、異常な言動が報告されています
呼吸器の持病やアレルギーがある方は、事前に医師へ伝えておきましょう。使用後に息苦しさや強い発疹などが出た場合は、すぐに医療機関へ連絡してください。
薬によって胎児・授乳中のお子様の情報量は異なる
1回の内服で済むバロキサビル(ゾフルーザ)は、飲み忘れの心配が少ない薬です。ただ、妊娠中や授乳中の使用に関する情報はまだ限られています4。海外の治療薬情報でも、妊娠中や授乳中の方には勧められていない扱いです2。
「新しい薬だから」「回数が少ないから」と、名前や手軽さで選ぶのは避けたいところ。これまでの使用経験の量、今の症状、飲みやすさを並べて、医師と決めていく流れが基本になります。どの薬でも胎児や授乳中のお子様への影響を完全に否定することはできないため、副作用が出たときの連絡先もあわせて確認しておきましょう。
発熱中の授乳は続けられる?解熱薬はどうする?
母親がインフルエンザでも授乳を続ける場合
インフルエンザにかかったことだけを理由に、授乳を中止する必要があるとは限りません。母乳を通してウイルスがうつることはまれと考えられており、母乳には母親の体でつくられた抗体も含まれます。気をつけたいのは母乳そのものより、授乳中の近い距離で起こるせきや飛沫による感染です。
熱や関節の痛みで抱っこがつらいときは、搾乳した母乳を家族に飲ませてもらう方法もあります。今回のようにお子様がすでに感染している場合は、お子様の回復状況も含めて医師に相談すると、授乳の続け方を決めやすくなります。
授乳とお世話の際にできる感染対策
お子様との接触が避けられない場面では、次の工夫が役立ちます。
- 授乳や抱っこの前に、石けんで手を洗う
- 授乳中もマスクをつけ、顔を近づけすぎない
- せきやくしゃみはティッシュや袖で受け止める
- 搾乳器や哺乳瓶は使うたびに洗う
- 夫の帰宅後は、寝かしつけやおむつ替えを分担する
タオルや食器の共用を避けるなど、家族全員で取り組むとうつし合いを減らせます。
市販の解熱薬は飲む前に成分を確認
手元の解熱薬を飲む前に、まず箱の成分表示を確かめてください。妊娠中・授乳中の発熱にはアセトアミノフェンが使われることが多いものの、用量や飲むタイミングは相談してから決めたい薬です。イブプロフェンやロキソプロフェンなどの鎮痛薬は、妊娠の時期によって使用に注意が必要とされています。
複数の成分が入った総合かぜ薬は、何がどれだけ含まれているか把握しにくく、自己判断での使用は控えましょう。すでに飲んだ場合は、薬の名前と服用時刻を記録して受診時に伝えてください。抗インフルエンザ薬と同じく、解熱薬も妊娠中・授乳中の情報量は成分ごとに異なります41。
名古屋市での受診前に整理したい症状と伝える内容
息苦しさ・水分が取れないときは受診を急ぐ
次の症状がある場合は、予約の空きを待たずに速やかに医療機関へ相談してください。妊娠中は症状が急に進むことがあるため、早めの対応が勧められています1。
- 息苦しさや胸の痛みがある
- 呼びかけへの反応が鈍い、意識がぼんやりする
- 水分がほとんど取れず、尿が極端に少ない
- いったん下がった熱が再び上がる
腹痛や性器出血など妊娠に関わる症状があれば、かかりつけの産科にも連絡しましょう。
電話で伝える発症時刻・妊娠週数・授乳と服薬の状況
電話をかける前に、次の内容をメモにまとめておくと話が伝わりやすくなります。
1. 発熱した時刻と、測った体温の経過(時刻と数値)
2. 関節痛・せき・のどの痛みなどの症状
3. 妊娠週数(例:11週)とかかりつけの産科
4. 授乳の回数とお子様の月齢
5. お子様がインフルエンザと診断された日
6. 使用した市販薬の名称と服用時刻
特に1と6は、薬を選ぶうえで医師が知りたい情報です。診療の考え方を自分で確認したい方には、診療ガイドラインを公開している情報源も入口になります5。
名古屋市でお子様を連れて受診する前の確認事項
名古屋市内でも、発熱のある方を予約制にしている、一般の診察と待合を分けているなど、受診方法は医療機関によって異なります。お子様を連れて行く可能性があるなら、同伴できるか、待つ場所があるかを電話で確かめておくと当日の負担が軽くなります。
当院に限らず、患者さまのご家庭の事情も含めて受診先に伝えることが大切です。千種区周辺で受診先を探している方も、まずは状況を伝えて相談し、必要に応じて産科と連携しながら治療方針を決めていきましょう。
よくある質問
Q1. 授乳中でも飲めるインフルエンザの薬はありますか?
A. オセルタミビル(タミフル)は母乳へ移る量がごくわずかとする報告があり、授乳中にも検討されることが多い薬です。吸入薬のザナミビルも、血液中へ移る量が少ないと考えられています。ただし、お子様への影響を完全に否定できるわけではないため、授乳の回数やお子様の月齢を伝えたうえで医師と相談してください。
Q2. インフルエンザにかかった母親は授乳してもいいですか?
A. 感染したことだけを理由に授乳を中止する必要があるとは限りません。母乳より、授乳中の近い距離でのせきや飛沫に注意が必要です。手洗いとマスクを徹底し、体調がつらいときは搾乳した母乳を家族に飲ませてもらう方法もあります。
Q3. インフルエンザにかかった妊婦はタミフルを服用しますか?
A. 妊娠中は重症化しやすいため、オセルタミビルによる治療が検討されることが一般的です。使用経験が比較的多い薬ですが、服用するかどうかは妊娠週数や症状を踏まえて医師が判断します。家族の残薬を自己判断で飲むことは控えてください。
Q4. 妊娠中や授乳中にインフルエンザワクチンは接種できますか?
A. 不活化のインフルエンザワクチンは、妊娠中のどの時期でも予防接種を受けられるとされています。母親の抗体が胎盤を通じて赤ちゃんへ移る「母子免疫」も期待されています1。授乳中の接種も可能です。成人の接種回数は通常1回で、鼻から噴霧する生ワクチンは妊娠中は対象外です。卵アレルギーがある方や、ほかのワクチンとの同時接種を考えている方は、事前に医師へ伝えてください。現在発熱している場合は、回復後に接種時期を相談しましょう。
Q5. 受診と抗インフルエンザ薬の費用はどのくらいかかりますか?
A. インフルエンザの診察・検査・治療薬は公的医療保険の対象です。3割負担の場合も、初診料・検査・薬代を合わせた費用は診療内容によって異なります。一般的な費用の説明であり当院の費用ではありません。実際の費用は医療機関や検査・薬の種類により異なり、当院の費用は診察のうえでご案内します。
参考文献
1. Idowu MB, Dotters-Katz SK, Kuller JA, et al. Seasonal Influenza in Pregnancy. Obstetrical & gynecological survey. 2025. PMID: 40598809 / DOI: 10.1097/OGX.0000000000001406
2. Antiviral drugs for influenza for 2023-2024. The Medical letter on drugs and therapeutics. 2023. PMID: 37935018 / DOI: 10.58347/tml.2023.1689a
3. 厚生労働省「健康づくりサポートネット(疾病・健康に関する情報)」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/
4. Hastings LE, Acosta EP, Kimberlin DW. Influenza Antiviral Pharmacokinetic-Pharmacodynamic Relationships in Pregnancy, Infancy, and Early Childhood. The Journal of infectious diseases. 2025. PMID: 41102610 / DOI: 10.1093/infdis/jiaf258
5. 公益財団法人 日本医療機能評価機構「Minds ガイドラインライブラリ」 https://minds.jcqhc.or.jp/
