
“春老け”は4月から始まる?紫外線(UVA)による光老化
「まだ春だから大丈夫」と思っているうちに、肌の老化は静かに進んでいます。実は4月の時点で、シワやたるみの原因となるUVAはすでに十分な強さに達しています。気づかないうちに差がつくこの季節に、正しい知識と対策を整理しておきましょう。
なぜ春は“老けやすい季節”なのか
春は紫外線対策が遅れやすい季節です。真夏のような強い日差しや暑さがないため、紫外線の影響を実感しにくいからです。
しかし実際には、UVAは年間を通してほぼ一定に降り注ぎ、4月にはすでに光老化を引き起こすレベルに達しています。しかもUVAは、曇りの日でも地表に届き、窓ガラスも透過します。
つまり、「焼けていない=ダメージが少ない」ではありません。
この“体感と実際のズレ”こそが、春に老化が進みやすい理由です。
光老化とは何か(シワ・たるみの正体)
紫外線は大きく2種類に分けられます。
🔴UVB:赤みや日焼けを起こす
🔴UVA:真皮まで到達し、肌構造を壊す
特にUVAは、活性酸素を介してコラーゲンを分解する酵素(MMP)を増加させ、皮膚のハリを支える構造そのものを徐々に崩していきます。
その結果として現れるのが、シワやたるみです。
肌老化の約8割は紫外線が関与するとされており、日々の積み重ねが将来の見た目に影響します。
紫外線対策は「選び方」より「使い方」で差がつく
日焼け止めは「何を使うか」も大切ですが、それ以上に「どう使うか」で効果が大きく変わります。
まず基本となるのが、SPFとPAの理解です。SPFは主にUVB(赤み・炎症)に対する防御力を示し、PAはUVA(光老化)への防御力を示します。アンチエイジングの観点では、PAを軽視しないことが重要です。
ただし、数値だけで安心するのは危険です。実際には、多くの人が必要量の半分程度しか塗れていないとされており、この時点で防御効果は大きく低下します。
顔であればパール粒2個分を目安に、できれば重ね塗りをすることでムラを減らすことができます。また、汗や摩擦によって日焼け止めは時間とともに落ちていくため、2〜3時間ごとの塗り直しが理想とされています。
とはいえ、メイクをしている状態での塗り直しは現実的に難しいことも多いでしょう。その場合は、スプレータイプやUVパウダーなどを補助的に使い、「防御をゼロにしない」ことが大切です。
紫外線対策は“多層防御”で考える
紫外線対策は、日焼け止めだけに頼るものではありません。
日傘(遮光率99%以上)、帽子、サングラス、UVカット衣類などを組み合わせることで、防御効果は大きく高まります。特に日傘は、熱や紫外線の遮断効果が高く、日常生活で取り入れやすい方法のひとつです。
また、ビタミンCやEなどの抗酸化成分、トラネキサム酸の内服などは補助的な対策として位置づけられますが、これらはあくまで「追加的なケア」であり、外用の代替にはなりません。

できてしまったシミ・くすみはどう考えるべきか
紫外線対策をしていても、シミやくすみが目立ってくることはあります。ただしここで重要なのは、「シミ=同じものではない」という点です。
見た目が似ていても、原因や治療反応性は大きく異なります。適応を誤ると、効果が出ないだけでなく、かえって悪化することもあります。
医療的アプローチ(適応別に考える)
まず、いわゆる「一般的なシミ」として多いのが老人性色素斑です。これは紫外線の蓄積によって生じるもので、境界が比較的はっきりしています。このタイプにはIPL(光治療)が選択肢となることがあり、メラニンに反応する光によって色調の改善が期待されます。ダウンタイムが比較的少ない点も特徴ですが、深いシワやたるみへの効果は限定的です。
一方で、肝斑はまったく異なる性質を持ちます。頬骨のあたりに左右対称に広がることが多く、摩擦や紫外線、ホルモンの影響を受けやすい、非常にデリケートな色素変化です。このため、強い刺激を与える治療はかえって悪化につながることがあります。
治療の基本は、炎症を抑えながら慎重に整えていくことです。トラネキサム酸の内服や導入療法、エレクトロポレーションによる薬剤導入、リバースピールのような段階的なアプローチが検討されます。IPLについては条件によっては使用されることもありますが、一般的には慎重な適応判断が必要です。
また、明確なシミではなく「なんとなく顔色がくすむ」「ハリが落ちた」といった変化の場合には、真皮へのアプローチが有効なことがあります。マッサージピールはコラーゲン産生を促し、ハリ感や軽度のトーン改善を目的とした治療で、比較的即時的な変化を実感しやすい一方、シミそのものを除去する治療ではありません。
このように、見た目が似ていても治療方針は大きく異なるため、自己判断ではなく「何のシミか」を見極めることが重要になります。
※当院でもこれらの施術を行っていますが、肌状態やシミの種類に応じて適応を判断しています。
やりがちなNG
紫外線対策では、「やっているつもり」で効果が十分に得られていないケースも少なくありません。
SPFだけを見て製品を選んでしまう、朝1回塗って終わりにしてしまう、春はまだ大丈夫だと思って対策を始めない、といった習慣は、知らないうちにダメージを蓄積させる原因になります。
また、シミをすべて同じものと考えて自己判断でケアを続けることも、結果的に遠回りになることがあります。
セルフチェック
日々の対策が適切にできているか、次のポイントで確認してみてください。
✅日焼け止めを選ぶ際にPAを意識しているか
✅日焼け止めは適量を塗れているか
✅塗り直しをしているか
✅首や手の甲までカバーできているか
✅室内や車内でも紫外線を意識できているか
さらに、シミの種類を理解せずに自己判断していないかも重要な視点です。
いくつか当てはまる場合は、少しの見直しで将来的な肌の変化を抑えられる可能性があります。
受診を検討したいサイン
シミやくすみは見た目だけで判断が難しいことも多く、次のような場合には一度診察で確認することが有用です。
・シミの種類が分からない場合
・左右対称にぼんやり広がる色素沈着がある場合(肝斑の可能性)
・短期間で増えたり濃くなった場合
・市販のケアで改善しない場合
・不均一な色や形が気になる場合
などは、治療方針の見極めが重要になります。
よくあるご質問(FAQ)
Q. 室内でも日焼け止めは必要ですか?
A. 窓際や車内ではUVAが透過するため、日中に光が入る環境では使用が推奨されます。特にUVAは目に見える変化が少ないままダメージを蓄積させるため、屋外に出ない日でも油断はできません。一方で、完全に遮光された環境で過ごす日まで厳重な対策が必要というわけではなく、生活環境に応じて調整することが現実的です。
Q. 塗り直しができない場合はどうすればいいですか?
A. 理想的には数時間ごとの塗り直しが推奨されますが、実際には難しい場面も多いものです。そのため、スプレータイプやパウダータイプなどを活用し、完全に落ちた状態を避けることが重要です。また、朝の段階で適量をしっかり塗ることが、防御効果を維持するうえで大きな意味を持ちます。
Q. SPFとPAはどちらが重要ですか?
A. どちらか一方ではなく、目的によって使い分けることが大切です。特に光老化の予防を重視する場合にはPAの重要性が高くなりますが、日常生活や屋外活動の程度に応じてSPFとのバランスを取る必要があります。
Q. 飲む日焼け止めは有効ですか?
A. いわゆる“飲む日焼け止め”やUVケアサプリは、抗酸化成分などを含み、紫外線による酸化ストレスを内側から軽減することを目的とした補助的な対策です。
紫外線そのものを皮膚表面で遮断するわけではないため、塗る日焼け止めや日傘などの代わりにはなりません。あくまで基本となる紫外線対策(外用+遮光)を行ったうえでの「追加のケア」として位置づけるのが適切です。
一方で、日常診療の中でも、
塗り直しが難しい方
屋外活動が多い方
光老化やシミ予防を意識されている方
などでは、抗酸化という観点から補助的に取り入れるメリットがあるケースもあります。
実際には、
活性酸素によるダメージ軽減
紫外線による炎症反応の抑制
日焼け後の回復サポート
といった目的で使用されることが多く、“ゼロにする”というより“ダメージを和らげる”イメージが近いです。
当院でも取り扱いがありますが、体質や生活スタイルによって向き・不向きがあるため、必要に応じてご相談いただく形でご案内しています。
Q. シミは自分で治せますか?
A. 軽度のくすみや炎症後色素沈着であれば外用や内服で経過を見ることもありますが、シミの種類によっては自己判断でのケアが不適切となる場合もあります。特に肝斑は刺激で悪化することがあるため、必要に応じて診断を受けることが望ましいです。

まとめ
春は紫外線対策が遅れやすい一方で、光老化が静かに進みやすい季節です。特にUVAは、日焼けのような分かりやすい変化を伴わないまま、シワやたるみといった将来的な肌変化に関わってきます。
日焼け止めの選び方や使い方、塗り直しの工夫といった日常的な対策を見直すことで、紫外線によるダメージはある程度コントロールすることが可能です。一方で、すでに気になっているシミやくすみに関しては、その種類によって適した対応が異なります。
紫外線対策は、日常のスキンケアで対応できる範囲も多い一方で、シミの種類や肌状態によっては医療的なアプローチが適している場合もあります。
特に、シミの種類が分からない場合や、市販のケアで改善しない場合、肝斑かどうか判断に迷う場合、どの治療を選べばよいか分からない場合には、一度状態を確認したうえで方針を整理することが重要です。
当院では、IPLやピーリング、導入治療などを含め、肌状態やライフスタイルに合わせたご提案を行っています。無理に施術をおすすめすることはありませんので、気になる点があればお気軽にご相談ください。
参考文献
・日本皮膚科学会, 2023, 光線過敏症診療ガイドライン
・環境省, 2023, 紫外線環境保健マニュアル
・WHO, 2022, Ultraviolet radiation
ちぐさ内科クリニック覚王山
内科/美容内科/美容皮膚科
内科医 美容皮膚科医 近藤千種

近藤院長の経歴はこちら
_________________________________________
千種区の発熱外来なら【ちぐさ内科クリニック覚王山】
CHIGUSA CLINIC KAKUOZAN
覚王山駅2番出口すぐ
院長 近藤千種 @chigusakondo_mrsjapan
火〜金曜:9時30分〜12時30分 14時30分〜19時00分(最終受付18時)
日曜 :9時30分〜17時(最終受付16時半)